多発する大規模自然災害と甚大な被害
阪神・淡路大震災(1995年),スマトラ沖地震・津波(2004年),ハリケーン・カトリーナ(2005年),四川大地震(2008年),ハイチ地震(2010年),そして東日本大震災(2011年)など,ここ20年の間に,世界的に大規模自然災害が多発しています。自然災害の犠牲者の90%は開発途上国の市民であり,最も脆弱な人々が災害の矢面に立たされているという現状があります。また経済損失も甚大(※)で,災害後の応急対応や復旧・復興には,多額の費用を要します。自然災害には,人命を奪うだけではなく,それまで築き上げてきた街や個人資産等,長年の開発の努力や成果を一瞬にして奪い去ってしまうという大きなリスクがあるのです。
(※)ハイチ地震 (2010年)の場合:ハイチのGDP(国内総生産)の1.2倍に当たる78億米ドルの損失。
防災の取組強化の必要性
災害被害を未然に防ぎ,被害を軽減するためには,「防災」は欠かすことのできない大切な取組です。近年多発する大規模災害は経済成長にも影響を与え,貧困の負の連鎖を生み出します。この負の連鎖から抜け出し,「持続可能な開発」を実現する上で防災は大変重要であり,防災を考慮して開発を進めることで,人命も開発の成果も守ることができるようになります。近年では多発する大規模災害の影響もあり,防災に関する国際社会の関心は高まってきています。また,人口増加によって都市化が急速に進展していることや,気候変動によって自然災害が生じるパターンが変化していることなどから,自然災害に対する脆弱性が増しているとも言えます。このような状況の中,現在の国際社会では,開発のあらゆる場面で,「防災の主流化」を促進しようという動きが活発になっています。
「防災の主流化」のために①:防災分野における日本の国際協力
「防災の主流化」とは,(1)各国政府が「防災」を政策の優先課題と位置づけること,(2)「防災」の視点をあらゆる開発の政策,計画に取り入れること,(3)結果として「防災」への投資が拡大されること,の3点から成る概念です。これまで幾多の災害を経験して培ってきた防災の知識や技術を持つ日本は,この「防災の主流化」に向けて防災体制の整備,事前防災投資,災害復興過程においてより強靱な地域を作る「より良い復興」(ビルド・バック・ベター)など様々な取組を実施し,国際社会をリードしてきました。政府開発援助(ODA)を通じた支援では,インドネシア,スリランカ,トルコなど世界の災害多発国の国家防災計画の支援や国家防災機関の能力強化支援など,国家の防災政策の最上流域から防災の主流化の支援を行ってきました。また,神戸市にあるアジア防災センター(ADRC) や国際復興支援プラットフォーム(IRP)への支援をはじめ,国連などの国際機関を通じた多国間協力や政府間協力などの支援も積極的に推進しています。
≪外務省情報より抜粋≫
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